
キングスアイランド(Kings Island)のコースターストック(Coasterstock)ももちろん楽しいのだが、個人的にジェットコースターのイベントの中で一番好きなのはホリデーワールド(Holiday World)のホリウッド・ナイツ (HoliWood Nights)だ。名前の通り木製コースターのナイトライドを中心に構成されており、2日間3時間半の夜のERTを楽しめる。
インディアナ州の農園地帯という辺鄙な場所にあるも関わらず、ホリウッド・ナイツにコースターストックやシダーポイント(Cedar Point)のコースターマニア(CoasterMania!)に負けない人数の参加者が集まる理由の1つがこのイベントでしか乗ることのできないトリムレス・ボヤージュ(Trimless Voyage)だ。
ボヤージュはPTC車両の限界に挑戦するようなゼロカントカーブ(※1)や後半のトンネルの中へ突き落されるようなトリプルダウンが人気で、木製コースターでは世界2位の長さを誇る。うっかり朝一番や涼しい日に乗ってしまうとあまりにも緩やかで拍子抜けしたり、逆に真夏日の昼下がりには同じ機種と思えないほど折り返し地点から暴走したりと、環境に左右されやすいナマモノなコースターでもある。
通常はトリプルダウンの手前で中間ブレーキ(=トリムブレーキ/trim brake)がかかるのだが、ホリウッド・ナイツの2日目の夜のみこのブレーキが解除されることから『トリムレス・ボヤージュ』というあだ名がついた。
先に結論を言うと、自分の中ではこのトリムレス・ボヤージュに匹敵するナイトライドは今のところ存在しない。5月末の夜というとインディアナ州は既に蒸し暑く、それだけでも十分走りは速くなるのだけれど、加えて車両は毎回マニアで満員御礼という最強条件。暗闇の中を上下左右に振り回され、失速することなくトリプルダウンに無謀に突っ込む感覚は、最後列など浮くというよりも体がもぎ取られるに近く、奇妙な笑い声が出てしまう。とにかく、ヤバい。
ボヤージュはオープン数年後に当時開発中だったティンバーライナー(Timberliner)車両に変更する予定だったのが納品が遅れたためにPTC車両のままになったという経緯があるそうだが、少なくとも自分も含む一部のマニアにとっては結果的には良かったのだと思う。トリムレス・ボヤージュは多少身の危険を感じるからこそ格段に面白く、これが快適な近代車両だと恐らくスリルは半減してしまう。
困ったことにホリウッド・ナイツでボヤージュだけではなく、レイブン(Raven)もレジェンド(Legend)もサンダーバード(Thunderbird)も全部化ける。レイブンは短いコースながら夜の森の中を駆け抜けるのが爽快だし、サンダーバードはイベント1日目は照明オン、2日目は照明オフと違いを出してくれる。レジェンドについては書くことがあまりにも多過ぎるのでまた別の機会に。とにかくナイトライド好きは毎年行かざるを得ないイベントなのだ。
※1 同じくPTC車両でゼロカントカーブが1回だけあるラビンフライヤーII(Ravine Flyer II)のニックネームは『ミニ・ボヤージュ』。