荒れ狂うボヤージュ

Voyage © 2020 h42m47

キングスアイランドKings Island)のコースターストックCoasterstock)ももちろん楽しいのだが、個人的にジェットコースターのイベントの中で一番好きなのはホリデーワールドHoliday World)のホリウッド・ナイツHoliWood Nights)だ。名前の通り木製コースターのナイトライドを中心に構成されており、2日間3時間半の夜のERTを楽しめる。

インディアナ州の農園地帯という辺鄙な場所にあるも関わらず、ホリウッド・ナイツにコースターストックやシダーポイントCedar Point)のコースターマニアCoasterMania!)に負けない人数の参加者が集まる理由の1つがこのイベントでしか乗ることのできないトリムレス・ボヤージュ(Trimless Voyage)だ。

ボヤージュはPTC車両の限界に挑戦するようなゼロカントカーブ(※1)や後半のトンネルの中へ突き落されるようなトリプルダウンが人気で、木製コースターでは世界2位の長さを誇る。うっかり朝一番や涼しい日に乗ってしまうとあまりにも緩やかで拍子抜けしたり、逆に真夏日の昼下がりには同じ機種と思えないほど折り返し地点から暴走したりと、環境に左右されやすいナマモノなコースターでもある。

通常はトリプルダウンの手前で中間ブレーキ(=トリムブレーキ/trim brake)がかかるのだが、ホリウッド・ナイツの2日目の夜のみこのブレーキが解除されることから『トリムレス・ボヤージュ』というあだ名がついた。

先に結論を言うと、自分の中ではこのトリムレス・ボヤージュに匹敵するナイトライドは今のところ存在しない。5月末の夜というとインディアナ州は既に蒸し暑く、それだけでも十分走りは速くなるのだけれど、加えて車両は毎回マニアで満員御礼という最強条件。暗闇の中を上下左右に振り回され、失速することなくトリプルダウンに無謀に突っ込む感覚は、最後列など浮くというよりも体がもぎ取られるに近く、奇妙な笑い声が出てしまう。とにかく、ヤバい。

ボヤージュはオープン数年後に当時開発中だったティンバーライナーTimberliner)車両に変更する予定だったのが納品が遅れたためにPTC車両のままになったという経緯があるそうだが、少なくとも自分も含む一部のマニアにとっては結果的には良かったのだと思う。トリムレス・ボヤージュは多少身の危険を感じるからこそ格段に面白く、これが快適な近代車両だと恐らくスリルは半減してしまう。

困ったことにホリウッド・ナイツでボヤージュだけではなく、レイブンRaven)もレジェンドLegend)もサンダーバードThunderbird)も全部化ける。レイブンは短いコースながら夜の森の中を駆け抜けるのが爽快だし、サンダーバードはイベント1日目は照明オン、2日目は照明オフと違いを出してくれる。レジェンドについては書くことがあまりにも多過ぎるのでまた別の機会に。とにかくナイトライド好きは毎年行かざるを得ないイベントなのだ。

トリムレスでは1:40辺りの中間ブレーキがありません。

※1 同じくPTC車両でゼロカントカーブが1回だけあるラビンフライヤーIIRavine Flyer II)のニックネームは『ミニ・ボヤージュ』。

暗闇のビースト

The Beast Awaits © 2020 h42m47

私はジェットコースターのナイトライドが大好きだ。遠くの遊園地に旅に出るときには必ず閉園時間だけでなく日没時間も調べている。視力が無駄に良く、高所やスピードは恐怖どころか大好き(要するに生粋のアホ)な自分にとってジェットコースターで『楽しさ』ではなく『スリル』を味わえるのは視界を奪われる夜だけと言っても過言ではない(※1)。

我が家から車で4時間かかるキングスアイランドKings Island)を第2のホームパーク呼ばわりしている理由の一つにナイトライドのクオリティの高さがある。地図で注目してもらいたいのがジェットコースターの位置。大多数が外周に設置されており、林に向かってコースが伸びているものも多いため、夜は格別暗くなる。イルミネーションも唯一明るめなのは入り口から見える位置にあるインバーディゴInvertigo)くらいではないだろうか。バットThe Bat)にいたっては夜はうっかりすると乗り場を見逃してしまう。

春夏の夜も楽しいけれど、やはりホーントHaunt)の期間中が日没が早い上に金曜と土曜は真夜中0時まで営業になるので一番ナイトライドを満喫できる。これでもかというほどスモークが焚かれるためゾンビに追いかけられているうちに迷子になってしまう危険性はあるが、何処にいてもとりあえずエッフェル塔Eiffel Tower)に向かって歩けば真ん中の通りに戻れると覚えておけば安心だ。

ちなみにジェットコースターには乗りたいけれど、驚かされるのは苦手という場合はノーブーネックレス(No-Boo Necklace)を購入して首にかければゾンビやモンスターに絡まれなくなる。ホーントの期間中はシダーフェアCedar Fair)系列のどのパークでも使用可能なので、キングスアイランドとシダーポイントCedar Point)をハシゴする場合は1回購入するだけでOK。毎年可愛いデザインなのでお土産代わりに買うのも良いかも知れない。

2018年バージョン。スイッチを押すと光る。

さて、前回の記事にも書いたけれど、キングスアイランドのナイトライドと言えばビーストThe Beast)。ハンズアップすると席によっては腹打ちしたり変なところにアザがついたりするほど荒い乗り心地なのにも関わらず、マニアだけでなく地元の一般のお客さんにも何故か愛されている。コースの大半が林の中にあり、月明かりのない曇りの日などは冗談抜きで真っ暗闇の中を延々と引きずり回される(※2)のだが、それをむしろ多くの人が楽しみにしており、ホーントの期間中は寒かろうが小雨が降っていようが列に並ぶ人が後を絶たない。

自分も大好きなナイトライドなので機会がある毎に列に並ぶ。しかし苦手な人は本当に苦手なジェットコースターなのも確かで、実は旦那も自分の友達もたまにしか乗りたがらない。2人とも身長が185cm以上なのだけれど、どうも終盤の巨大なヘリックスが体に堪え、体調が万全でないと頭痛までするらしい。トンネルの中はヘッドチョッパー(head chopper/頭が天井に当たるように錯覚すること)効果もあるので背の高い人には余計きついのかも。自分はハンズアップでも全然平気。たまには低身長でラッキーなこともあるものだ。

もちろんナイトライドが楽しいのはビーストだけではなく、意外なところではアロー社のマイントレインのアドベンチャー・エキスプレスAdventure Express)なんかが個人的にお気に入りだったりするのだが、その話はまた次の機会に。とにかく百聞は一ライドに如かずなので、興味のある方は是非一度乗りに来て欲しい。

何も見えなくて途中ビデオ撮ってる意味が(以下略)

※1 先天性の夜盲症。灯りが全くない夜の道での運転では冷や汗をかく。

※2 ビーストは世界一長い木製ジェットコースターの記録を持ち、2km以上もある。

ゴーストライダー再び

GhostRider © 2000 h42m47

約1年5か月振りにカリフォルニアのナッツベリーファームKnott’s Berry Farm)に行ってきた。月曜朝8時過ぎの便で出発して火曜の夜行便で帰って来るというアメリカ大陸横断するにはタイトなスケジュールだ。

ペンシルバニアやオハイオ周辺の遊園地は大抵営業は元旦までで、春が来るまではメンテも兼ねて押しなべて閉園してしまう。1月に入れば気温が氷点下の日もぐっと増え、たまに雪も積もったりするので仕方がない。しかし職場の大仕事が一段落して大学の期末試験も終わったというのに遊園地に行って発散できないのはジェットコースターマニア的には死活問題(ちょっと大げさか)。幸いここ2か月の自分のストレスの溜まり具合を熟知している旦那は2日間の育児ワンオペを快諾してくれ、弾丸旅行決行となった。『心の健康を大切に』は我が家のモットーである。

何故ナッツなのかというと、単にゴーストライダーGhostRider)という木製ジェットコースターにまた乗りたくなったから。あとナッツ含むシダーフェアCedar Fair)系列の遊園地に全部行けるプラチナムパス(Platinum Pass)を今年も更新したのだが、列を全てすっ飛ばすことができるファーストレーンプラス(Fast Lane Plus)の年パスまで購入してしまったので、早く元を取りたいという思いも強かった。お値段が張る(※1)とは言え、混雑する週末・祝日でも気兼ねなく遊びに行けるので、自分のような社会人子持ちジェットコースターマニアにとってはとてもありがたいサービスだ。

さてこのゴーストライダー、 昼間乗っても十分楽しいのだけれど、本領を発揮するのは断然日没後。車輪が十分に温まりスピードが上がるのでドロップや横Gでやたら振り回されるのはもちろん、シンプルなオレンジの照明とたまに見える夜景以外の視界が奪われるので楽しいことこの上ない。なのに車両が体に優しいGCI社のミレニアムフライヤーMillennium Flyer)でリピートしてもダメージが少ないという優秀さ(※2)。このジェットコースターのあるゴーストタウンGhost Town)というエリア全体が照明を最小限に落としていて怪しい雰囲気抜群なのも心に刺さる。今まで200機種以上乗ってきたけれど、ナイトライドに関して言えば自分の中では未だにトップ5に入るジェットコースターだと思う。

幸い飛行機は定刻通りに着き、初日は半日滞在しただけにも関わらずゴーストライダーに4回乗れた。正直乗ろうと思えばもっと乗れたのだが、スタッフさんが『最後列が好きな人』と覚えていてくれ、祝日で混んでいて基本的に席指定不可だったにも関わらず毎回最後列に誘導してくれたので十二分に楽しめてしまった。乗りたいジェットコースターは一通り全部こなし、ゴーストライダーとは対照的にイルミネーションが派手なことこの上ないハングタイムHangTime)も夜2回乗れたので9時頃には満足してホテルに戻り、2万歩以上歩いたこともあって朝まで熟睡した。

2日目はピッツバーグに引っ越して以来ご無沙汰のロサンゼルス在住の友人と合流。ナッツに一度も行ったことがないと言うので強制連行したのだが、聞けばジェットコースターは大好きと言うし、生まれ育ちはニュージャージーでシックスフラッグス・グレート・アドベンチャーSix Flags Great Adventure)にはよく行っていたそうだから驚きだ。知り合って7年になるのに一度も話題に上らなかったのが不思議で仕方がない。

シックスフラッグスで一番好きだったのが木製のエルトロEl Toro)と言うので嬉々としてゴーストライダーに真っ先に乗りに行ったら、案の定『これはもう一回乗りたい』と上機嫌。結局この日はジェットコースターに乗ってはビールを飲み、また乗っては休憩してビールを飲みを繰り返した。シルバーバレットSilver Bullet)では2人ともアルコールのせいで目が回り、手すりに掴まらないと階段を下りることができずバカ笑い。おかげで予算オーバーしてしまったが、なかなか会えない相手と飲む酒のためなら安いもんである。

予算オーバーとは言ったけれど、弾丸旅行にも関わらず時間には比較的余裕があり、行きも帰りもメトロとバスを使ったので交通費は合計たったの$3.50だった。空港から2時間ほどかかってしまうが、乗客を観察したり外の風景をのんびり眺めたりできて悪くない。おまけにバスには座席下に充電用のUSBポートが付いているという親切さ。ピッツバーグのバスもシンクホールに落ちてないで見習って欲しいものだ。

帰りの便も定刻通りで、水曜の朝7時頃到着。ロサンゼルスでは20℃前後の陽気だったのが、ピッツバーグは‐12℃。飛行機を降りた直後は寝不足で呆けていたものの、駐車場で車のフロントガラスに貼り付いた氷をゴリゴリ削っているうちにすっかり目が覚めた。春も次のジェットコースターもまだ遠い。

中間の折り返しの直後のドロップと後半のヘリックスが特に気に入っている。

※1 シダーフェアの年パス関連はカナダズ・ワンダーランドCanada’s Wonderland)から購入するとカナダドル決済になり為替レートのおかげで20%以上の割引になる。多くのアメリカのジェットコースターマニアが使っている裏技。

※2 私はPTC社の狭苦しい車両で膝や腿や肘にアザ作って喜ぶようなバカなので、実は快適さにはあまりこだわらなかったりする。