暗闇のビースト

The Beast Awaits © 2020 h42m47

私はジェットコースターのナイトライドが大好きだ。遠くの遊園地に旅に出るときには必ず閉園時間だけでなく日没時間も調べている。視力が無駄に良く、高所やスピードは恐怖どころか大好き(要するに生粋のアホ)な自分にとってジェットコースターで『楽しさ』ではなく『スリル』を味わえるのは視界を奪われる夜だけと言っても過言ではない(※1)。

我が家から車で4時間かかるキングスアイランドKings Island)を第2のホームパーク呼ばわりしている理由の一つにナイトライドのクオリティの高さがある。地図で注目してもらいたいのがジェットコースターの位置。大多数が外周に設置されており、林に向かってコースが伸びているものも多いため、夜は格別暗くなる。イルミネーションも唯一明るめなのは入り口から見える位置にあるインバーディゴInvertigo)くらいではないだろうか。バットThe Bat)にいたっては夜はうっかりすると乗り場を見逃してしまう。

春夏の夜も楽しいけれど、やはりホーントHaunt)の期間中が日没が早い上に金曜と土曜は真夜中0時まで営業になるので一番ナイトライドを満喫できる。これでもかというほどスモークが焚かれるためゾンビに追いかけられているうちに迷子になってしまう危険性はあるが、何処にいてもとりあえずエッフェル塔Eiffel Tower)に向かって歩けば真ん中の通りに戻れると覚えておけば安心だ。

ちなみにジェットコースターには乗りたいけれど、驚かされるのは苦手という場合はノーブーネックレス(No-Boo Necklace)を購入して首にかければゾンビやモンスターに絡まれなくなる。ホーントの期間中はシダーフェアCedar Fair)系列のどのパークでも使用可能なので、キングスアイランドとシダーポイントCedar Point)をハシゴする場合は1回購入するだけでOK。毎年可愛いデザインなのでお土産代わりに買うのも良いかも知れない。

2018年バージョン。スイッチを押すと光る。

さて、前回の記事にも書いたけれど、キングスアイランドのナイトライドと言えばビーストThe Beast)。ハンズアップすると席によっては腹打ちしたり変なところにアザがついたりするほど荒い乗り心地なのにも関わらず、マニアだけでなく地元の一般のお客さんにも何故か愛されている。コースの大半が林の中にあり、月明かりのない曇りの日などは冗談抜きで真っ暗闇の中を延々と引きずり回される(※2)のだが、それをむしろ多くの人が楽しみにしており、ホーントの期間中は寒かろうが小雨が降っていようが列に並ぶ人が後を絶たない。

自分も大好きなナイトライドなので機会がある毎に列に並ぶ。しかし苦手な人は本当に苦手なジェットコースターなのも確かで、実は旦那も自分の友達もたまにしか乗りたがらない。2人とも身長が185cm以上なのだけれど、どうも終盤の巨大なヘリックスが体に堪え、体調が万全でないと頭痛までするらしい。トンネルの中はヘッドチョッパー(head chopper/頭が天井に当たるように錯覚すること)効果もあるので背の高い人には余計きついのかも。自分はハンズアップでも全然平気。たまには低身長でラッキーなこともあるものだ。

もちろんナイトライドが楽しいのはビーストだけではなく、意外なところではアロー社のマイントレインのアドベンチャー・エキスプレスAdventure Express)なんかが個人的にお気に入りだったりするのだが、その話はまた次の機会に。とにかく百聞は一ライドに如かずなので、興味のある方は是非一度乗りに来て欲しい。

何も見えなくて途中ビデオ撮ってる意味が(以下略)

※1 先天性の夜盲症。灯りが全くない夜の道での運転では冷や汗をかく。

※2 ビーストは世界一長い木製ジェットコースターの記録を持ち、2km以上もある。

さようならボルテックス

Vortex During WinterFest © 2020 h42m47

とうとうキングスアイランドKings Island)のボルテックスVortex)の撤去が始まったそうだ。

一昨年ファイアーホークFirehawk)のクローズが発表された時はフライングコースターが大好きな自分にとってはかなりショックだったが、部品の入手が困難でもうこれ以上メンテができないと聞いており、跡地にB&Mのギガコースターが入るいう噂もあったので仕方がないと割り切れた(※1)。流石にループが取り壊される映像を見たときには鼻の奥がツーンとしてしまったが。

それに比べてボルテックスは見た目はとても格好良いけれど、アロー社のショルダーハーネス(OTSR)はうまく乗らないと必ず頭を打つし、巻き上げはやたら遅い上に何ならたまに途中で止まってしまうしで、自分の好きなコースターからは程遠い・・・はずだった。

事の始まりは去年5月のコースターストック(CoasterStock)。このイベントの目玉の1つに閉園時間から真夜中までのERT(Exclusive Ride Time/参加者にのみいくつかのライドが開放される)があり、真っ暗な林の中を走り抜けるビーストThe Beast)のERTはマニアに特に人気で、自分もご多分に漏れず友達と乗りに行った。

そのビーストから満足して降りた直後に見えたのがゴトゴトゴトゴトと大きな音を立てながら走るボルテックスの空車両。ERTのリストに含まれてはいたものの、参加者の大半はビーストやダイアモンドバック(Diamondback)、そしてミスティック・ティンバーズ(Mystic Timbers)に流れていかんせん人気がなさそうな雰囲気。

直感的に『これは今乗らなあかんかも』と思い、痛そうだから嫌とゴネる友達を置いて乗り場へ行ってみると、案の定他には誰もいない。しかし3台律義に走らせているようで、スタッフさんが再び空出ししようとしていた車両を慌てて止めて乗せてくれた。そして『クリア!』と笑顔で親指を立てて自分1人をディスパッチ。ゴトゴトゴトゴトうるさく自己主張するジェットコースターに暗闇の中ぼっちで乗っていることがひたすら可笑しく、コークスクリューでハーネスに頭を打ちそうになることなんてどうでも良くなってしまっていた。

そう、人生初のゼンライドZen Ride/車両にたった1人で乗ること)を経験させてくれたのがボルテックスだったのだ。その後乗り方のコツを覚えたらハーネスはあまり気にならなくなり、偶然スタッフさんの『僕はボルテックスを愛しています』『雨の日には車両を磨いたりしています』なんていう話を読んでしまったりもして(※2)本気で愛着が沸いてきた矢先のクローズの発表だった。10月のホーントHaunt)の期間中に乗り納めには行けたものの、もっと乗れる時に乗っておけば良かったと今更悔やんでいる。

11月のウィンターフェストWinterFest)ではボルテックスの横の通り道は例年通りシンプルな照明で飾られたツリーが並ぶ以外はひっそりとしていた。前年と違ったのは自分と同じようにもう二度と動くことのないジェットコースターを立ち止まって見つめるマニアが数人いたことだけだ。

Rest in Pieces, Vortex.

しかしこう見ると巻き上げは冗談抜きに遅かった・・・。

※1 2020年4月11日オープン予定のオリオン(Orion)。決してオニオンではない。

※2 このスタッフさんのブログ、日によって変わるウィンドシーカー(WindSeeker)からの景色や流れた曲のことも書かれていて素敵だったのに今はなくなっていてとても残念。