奇跡のリベンジ

Low-Profile Train of Phantom’s Revenge © 2020 h42m47

第2のホームパークはキングスアイランドKings Island)と言ったが、第1のホームパークは我が家から車で30分ほどのところにあるケニーウッドKennywood)だ。

1899年から営業している老舗の遊園地(※1)。規模は比較的小さいのだが、世界に一つしかないジェットコースターが多いというのが一番の強みで、古い順に並べてみるとこうなる。

  • ジャックラビットJack Rabbit)― 木製地形利用コースター。1920年オープン。
  • サンダーボルトThunderbolt) ― 木製地形利用コースター。1924年オープン。1967年改築、ピピン(Pippin)より改名。
  • レーサーRacer) ― 木製メビウス型レーシングコースター。1927年オープン。
  • ファントムズ・リベンジPhantom’s Revenge) ― 鉄製地形利用ハイパーコースター。1991年オープン。2001年改築、スチールファントム(Steel Phantom)より改名。
  • スカイロケットSky Rocket) ― 鉄製ランチコースター。2010年オープン。
  • スチールカーテンSteel Curtain) ー 鉄製ハイパーコースター。2019年オープン。

スピニングコースターのエクスターミネーターExterminator)ですら屋内型はケニーウッドの他に1か所しかない。またジェットコースターに限らずフラットライドもユニークなものが数基あり、自然とエアタイムでハンズアップになるカンガルーKangaroo)に未だに乗れるのもこの遊園地だけだったりする。

ケニーウッドのジェットコースターの中で特に注目してもらいたいのはやはりファントムズ・リベンジ。近年木製コースターのRMC社によるハイブリッド化が人気だが(日本では2019年ナガシマスパーランドに白鯨がオープン)、そのトレンドが始まる以前にアローArrow Dynamics)のスチールファントムを悪評高いルーピングコースターからエアタイム満載の世界唯一の地形利用ハイパーコースターに生まれ変わらせたのがスチールドラゴン2000で有名なモーガンMorgan)だ。

モーガンはGがかかり過ぎて痛いと苦情の多かったループやコークスクリューを取り除くなど大掛かりなレイアウトの変更を行っただけでなく、車両の改造も行い、ショルダーハーネスはシンプルな棒状のラップバーに変わった。このラップバーが笑えるほどスカスカで、イジェクタ―(ejector/投げ出されるようなエアタイム)では時折安全性を疑うほど体が滑り出る。アローの車台を再利用しているため目線も低く、最高速度も時速130km以上でかなりスリリングな乗り心地になっている。

残念ながらファントムズ・リベンジはモーガン最後の大掛かりなプロジェクトとなってしまい、この改造車両が他の遊園地に普及することはなかった。オーナーは2001年に引退し、全ての資産をライバルのチャンスChance Rides)に売り払っている(※2)。皮肉なことにRMCの創立は同じ2001年。木製の改造はRMC、アローの改造はモーガンなんて世界線もありえたのかも知れないと思うと非常に悔やまれる。

日中に乗っても十分に楽しめるファントムズ・リベンジだが、地形利用コースターのご多分に漏れずナイトライドも秀逸。ハロウィンイベントのファントム・フライトナイトPhantom Fright Night/通称PFN)では正に主役であり、遊園地全体が照明を落としている中真っ暗闇に吸い込まれるセカンドドロップでは毎回アドレナリンが出てしまう。PFNは年パス所持でも追加料金がかかるのだけれど、『ケニーウッドのケチ!!』と文句を言いながらも毎年1回は行ってしまうのはそれだけの価値があるからだ。

長くなってしまうので他のジェットコースターについてはまたの機会に。地元バイアス抜きにしてもかなりユニークな遊園地なので、もっと知名度が上がれば良いなあと思っている。

ファーストよりもセカンドの方がドロップが大きい。

※1 元々は路面電車の終点に作られたトローリーパークtrolley park)だった。今はバスは通っているが残念ながら電車は通っていない。

※2 チャンスのライトニング・ランLightning Run)はコスパ最強の優良コースターなのに何故このHyper GT-Xというモデルが普及していないのか未だに謎。

さようならボルテックス

Vortex During WinterFest © 2020 h42m47

とうとうキングスアイランドKings Island)のボルテックスVortex)の撤去が始まったそうだ。

一昨年ファイアーホークFirehawk)のクローズが発表された時はフライングコースターが大好きな自分にとってはかなりショックだったが、部品の入手が困難でもうこれ以上メンテができないと聞いており、跡地にB&Mのギガコースターが入るいう噂もあったので仕方がないと割り切れた(※1)。流石にループが取り壊される映像を見たときには鼻の奥がツーンとしてしまったが。

それに比べてボルテックスは見た目はとても格好良いけれど、アロー社のショルダーハーネス(OTSR)はうまく乗らないと必ず頭を打つし、巻き上げはやたら遅い上に何ならたまに途中で止まってしまうしで、自分の好きなコースターからは程遠い・・・はずだった。

事の始まりは去年5月のコースターストック(CoasterStock)。このイベントの目玉の1つに閉園時間から真夜中までのERT(Exclusive Ride Time/参加者にのみいくつかのライドが開放される)があり、真っ暗な林の中を走り抜けるビーストThe Beast)のERTはマニアに特に人気で、自分もご多分に漏れず友達と乗りに行った。

そのビーストから満足して降りた直後に見えたのがゴトゴトゴトゴトと大きな音を立てながら走るボルテックスの空車両。ERTのリストに含まれてはいたものの、参加者の大半はビーストやダイアモンドバック(Diamondback)、そしてミスティック・ティンバーズ(Mystic Timbers)に流れていかんせん人気がなさそうな雰囲気。

直感的に『これは今乗らなあかんかも』と思い、痛そうだから嫌とゴネる友達を置いて乗り場へ行ってみると、案の定他には誰もいない。しかし3台律義に走らせているようで、スタッフさんが再び空出ししようとしていた車両を慌てて止めて乗せてくれた。そして『クリア!』と笑顔で親指を立てて自分1人をディスパッチ。ゴトゴトゴトゴトうるさく自己主張するジェットコースターに暗闇の中ぼっちで乗っていることがひたすら可笑しく、コークスクリューでハーネスに頭を打ちそうになることなんてどうでも良くなってしまっていた。

そう、人生初のゼンライドZen Ride/車両にたった1人で乗ること)を経験させてくれたのがボルテックスだったのだ。その後乗り方のコツを覚えたらハーネスはあまり気にならなくなり、偶然スタッフさんの『僕はボルテックスを愛しています』『雨の日には車両を磨いたりしています』なんていう話を読んでしまったりもして(※2)本気で愛着が沸いてきた矢先のクローズの発表だった。10月のホーントHaunt)の期間中に乗り納めには行けたものの、もっと乗れる時に乗っておけば良かったと今更悔やんでいる。

11月のウィンターフェストWinterFest)ではボルテックスの横の通り道は例年通りシンプルな照明で飾られたツリーが並ぶ以外はひっそりとしていた。前年と違ったのは自分と同じようにもう二度と動くことのないジェットコースターを立ち止まって見つめるマニアが数人いたことだけだ。

Rest in Pieces, Vortex.

しかしこう見ると巻き上げは冗談抜きに遅かった・・・。

※1 2020年4月11日オープン予定のオリオン(Orion)。決してオニオンではない。

※2 このスタッフさんのブログ、日によって変わるウィンドシーカー(WindSeeker)からの景色や流れた曲のことも書かれていて素敵だったのに今はなくなっていてとても残念。